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自由なき人生など、惨めなものだ - Andrew Hamilton

経営者視点で語る、研修・社員教育の重要性とあるべき姿

f:id:yRy:20160428215037j:plainphoto credit: Regional Workshop on Governance Framework and Institutional Arrangements IWRM - Day 3 via photopin (license)

大抵の会社は「我が社の一番の資産は人材です」と語る。そして優秀な人材の確保に力を注ぐ。否、注いでいるつもりになっている。

企業の人材採用部門は、
まず最初に、採用市場の動向をリクナビ、マイナビ等から聞きだし、
これまでの採用実績、会社の業績をもとに採用計画を打ち立てる。

そして求人をかけ、(もしくはヘッドハンティング業者に依頼を出し、)
集まった何名かの候補者をふるいにかける。

面接を潜り抜けた者に内定を出したあとは、
他社にすっぱぬかれることがないよう、雇用条件を詰めていく。

採用部門の仕事は「優秀な人材をどれだけ集められたか」で評価される。

そのため、どの会社も、
 「~という大学を出た人を~名集めた」
 「人材の採用に~円かけた」
 「~名の応募者がいたが、最終的に採用したのは~名」

という統計情報ばかりが充実している。

 

しかし、会社が集めようともしない、
そして、極めて重要な、統計情報がある。

 

それは、

「採用した社員のうち、職務貢献度の高い社員は何%であるか」だ。

 

鳴り物入りで入社した社員が、しばらくすると大した社員でないことが判明するケースは多い。

 

毎年行われる人事評価により、社員の職務貢献度は定量化されているはずだが、社員の職務貢献度と採用実績を紐づけている会社は少ない。

紐づけを行うと、選りすぐった人材の職務貢献度の低さに、会社のお偉いさんは愕然となるだろう。「採用戦略を立て、適性試験、面接を数え切れないほど行ってきたが、すべては無駄だったのか」と暗澹たる気持ちになるだろう。

 

ここで私が言いたいのは、
「職務貢献度の高い社員を雇用する難しさ」ではない。

 

「職務貢献度の高い社員をいかに増やすか」である。

 

そして、職務貢献度の高い社員の増やし方は採用だけではない

育てて、増やせばいいのだ。
研修、社員教育はそのためにある。

優秀な社員を、より優秀にするためではない。
全体の職務貢献パフォーマンスを底上げするためにある。 

 

ここで、研修、社員教育とは何たるかを説明する。

社員教育を兼ねたOJTが流行っている。しかし、OJTが「職務貢献パフォーマンスの高い社員を増やす」という明確な目的にもとづいて行われた試しがない。

OJTは「仕事は現場で覚えてもらうのが一番効率がいい」という考えから生まれたが、現場の仕事についていけなかった社員はどうなるのだ。現場の人間関係にそぐわなかった社員はどうなるのだ。職務貢献度の低い社員のままである。

OJTでメキメキ成長していくような社員は、採用時点で優秀な人材だったのだ。
そんな人材を採用時点で見極めるのは不可能に近い。*1

OJTは、新入社員の職務適正の確認、マネージャーの育成、という面では優秀なシステムだが、社員教育システムとしては欠陥が目立つ。しかし、実務経験を育てる教育手法にOJT以上のものがないのも事実だ。

つまり、OJTに加え、職務貢献度の向上に直接作用する研修、社員教育が必要となる。

では、職務貢献度の向上に直接作用する教育とはなんだろうか。

 

具体的に言うと、

プロフェッショナル社員、マネージャークラス、役員クラスの人が1年毎に100時間ほど費やし、行う教育のことだ。もちろん、OJTのような現場教育ではなく、教育対象者に直接コミットする教育だ。教える内容は、プロフェッショナルの仕事術、会社のビジョンの共有、の2点。(※100時間と書いたが、準備時間も含む。)

 

ビジネスマナー研修、社外研修、Off-JTなどしなくとも、プロフェッショナルの仕事術、会社のビジョンの共有、の2点を徹底的に教育しておけば、人は自然に育つ。
そして、へんなスピーチをするより、よほど企業文化の醸成に繋がる。


ここで簡単な計算をしよう。

新入社員とプロ社員が1つの会社で1年働くとする。
だいたい1人2,000時間、その会社で働くことになる。

新入社員は2,000時間で10%の貢献をする。
新入社員の職務貢献値は2,000(h)×0.1=200

 

プロ社員は2,000時間で80%の貢献をする。
プロ社員の職務貢献値は2,000(h)×0.8=1,600


新入社員とプロ社員の職務貢献度の合計値は1,800だ。

ここで、プロ社員が新入社員の教育に100時間費やし、
新入社員の職務貢献度を20%に底上げする

新入社員の職務貢献値は1,900(h)×0.2=380
プロ社員の職務貢献値は1,900(h)×0.8=1,520


新入社員とプロ社員の職務貢献度の合計は1,900になる

つまり、教育有りと無しでは
職務貢献合計値に100もの違いが生まれる。

新入社員1名で計算したが、教育の対象者は新入社員に加え、一般社員、中間管理職、なども含まれる。また研修、教育の内容によっては、1対1のみならず、複数名あるいは社員全体に向けて行うほう場合もある。もろもろを勘案すると、プロフェッショナルが行う教育の効果は上記計算式よりもはるかに高く出る。

そもそも社員教育は会社を支えるトップ層の最も重要な仕事の一つである。

かのドラッカーも、マネージャーの二大役割の一つに「投入した資源の総和よりも、大きなものを生み出す生産体の創造」を挙げている。

加えてドラッカーは、組織の精神について「凡人から強みを引き出し、ほかの者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する」と述べている。

 

また、社員が自発的に会社を辞める理由は、

  • 会社の人間関係
  • 今の会社に残る理由がない

のふたつに収斂する。

このふたつは、会社を支えるトップ層の教育によって対処できる。


まとめよう。
研修、社員教育の重要性の理解、ならび本来あるべき研修・社員教育を目指すことは、下記3つの観点から、非常に重要である。

①貢献度の高い社員を増やし、
②企業文化を醸成し、
③会社を辞める社員を減らす対策になる

 

*1:コンピテンシー分析(業績をあげる人の特性分析)を活用した採用は無駄だ。面接で、業績を上げる人固有の特徴の持ち主かどうかは見抜けない。

また、インターンシップ生から雇用するのも悪くはないが、賢いやり方ではない。
なぜならば、人の職務貢献度を完全に把握するには最低半年必要とする。人の職務適正とは、数週間のインターンシップで見極められるものではなく、また長期のインターンシップはコストパフォーマンスが悪すぎる。