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自由なき人生など、惨めなものだ - Andrew Hamilton

今の時代の「障がい者採用」の歪(いびつ)さ

f:id:yRy:20160422140904j:plainphoto credit: Silent Observer via photopin (license)

 

いまの障害者採用は、
「障害内容に配慮し、その人にできる仕事を提供する」という考えが根底にあります。

断言します。
この考えは、障害者、雇用者、職場の仲間、みんなを不幸にするだけです。 

 

障害者は、当然、障害を持ちます。
障害内容は千差万別です。
障害内容によってフォローの内容も変わってくるでしょう。

 

しかし、それよりも先に考慮するべき事項があります。
それは、障害者の「気質・個性」のことです。

1人を好む人もいれば、みんなと過ごすことを好む人もいます。論理的に考えることを好む人もいれば、感情ベースで考えることを好む人もいます。ルーチンワークが得意な人、クリエイティブな仕事が得意な人、商談をまとめるのが得意な人、管理することが得意な人、etc

 

世の中には、色んな個性があります。
そして、その人に向いている仕事、向いていない仕事が確実に存在します。

 

しかし、どういうわけか、障害者の採用、仕事内容となると、障害者が持つ個性の多様さ、職業適性が見過ごされがちになります。例えば、障害者を対象にした求人案件のほとんどが、管理部門の事務サポートです。そして、事務処理に適性のある障害者は、考えられている以上に少ないです。

 

ここで、この記事を閉じそうになったあなた。
私は「障がい者の障害と個性に配慮しろ!」という乱暴な主張をするわけではありません。障害者も雇用者も、お互いハッピーになりましょう、という想いで、この記事を作成しました。最後までお付き合いください。

 

今の障害者の労働市場の需要と供給のバランスは、下記のようになっています。

 

【需要:雇用者】「目標の障害者雇用数を達成したい。だから、障害者でも働ける事務職or専門職のポジションを用意して、求人をかけよう。」と考え、面接で印象が良く、障害も軽そうな人を事務職or専門職で雇おうとする。

 

【供給:障害者】「働きたい。しかし、障害上の問題から、職業選択の範囲が限られている。でも。専門的なスキルがない。働くなら事務職しかない。」と考え、事務職で雇われることを受け入れる。

 

障害持ち労働者の需要と供給の間にある考え方に従うと、事務職に向いていない障害者が事務職に就く、ということが頻繁に起こります。

事務処理能力の高い障害者はよいのですが、、、事務処理能力の低い障害者は悲惨な目にあいます。職場の人は、障害者の貢献度の低さに苛立ち、その人の障害内容ですら憎々しく思えてきます。

例えば、ケアレスミスを連発する難聴の事務スタッフAさんの場合。
職場の人は「ケアレスミスはするし、電話対応も障害のせいで任せられない。Aさんはどんな仕事ならできるのだろうか」とフラストレーションを溜めます。

 

そうやって、Aさんは職場内の人間関係をこじれさせてしまい、孤立します。

 

このままではいけないと、そのAさんは次の職場を求めて、転職活動を行います。しかし、事務職しか求人が無い。事務職以外の職種を探しても、仕事が見つからず、貯金が底をつく。「環境が変われば上手くいくかもしれない」と考え、Aさんは再び事務職として働くことを受け入れます。そして、前の職場の悲劇を繰り返します。

 

この労働市場の需要と供給の関係が如何に歪んでいるかは、障害者の転職率の高さや、自分らしさを発揮できる職場を探し彷徨っている障害者の数が示しています。

そして私は、下記のように考えました。
「障害内容に配慮し、その人にできる仕事を提供しようとする」ではなく、
「障害上の懸念事項があったとしても、思い切ってその人に適性がみられる仕事を任せる」という考え方がデファクトスタンダートになれば、みんな幸せになれる。

 

その障害者に、実務上の適性があるとわかれば、周りも育てる気持ちになります。また、その障害者の職業貢献度が高いほど、周囲もその人の障害内容に対して寛容になれます。どういったフォローがあれば、彼/彼女はより高いパフォーマンスを発揮できるか、みんなで工夫するようになります。正の循環が生まれます。

実際、「障害の特徴上、できないこと」よりも「その人の性格や職業適正上、できないこと」のほうが、はるかに解決困難な課題であり、フォローコストもかさみます。

しかし、障害への配慮に目がいくばかりに、この事実に、ほとんどの人が気づいていません。障害者を雇用するとストレスばかりたまる、という悪循環の原因は、「障害への配慮を最優先事項にする」考え方にあるのです。

 

 問題は、「障害の特徴上、できないことがある。だから、任せられない。」という雇用者の考えを、「障害の特徴上、できないことがある。でも、任せてみよう。」という考えに、いかにして書き換えるか、です。

 

つまり、

1)障害内容に配慮しつつ、仕事をアサインすると、その障害者のフォローに労力コストが異常にかかり、あなたも障がい者も辛くなる。生産性は下がり、ダイバーシティも実現できない。

2)障がい内容はいったん無視し、その障害者に適性のある仕事をアサインする。そうすることで、結果的に組織の生産率は上がる。あなたも楽になるし、期待している以上の結果が得られる。なによりダイバーシティを実現できる。

上記2点を、雇用者に理解してもらう具体的な方法を考える必要があります。 

 

私は次のような方法があると考えています。

 ●障害者に必要なフォローコストを折り込んだゲーム理論モデルを構築し、障害者が得意とする仕事を任せるメリットを見える化する。

●MBTI(ユングのタイプ論)体験セミナーを企画し、自分と自分以外の人との間にある「気質の違い」を体験してもらう。あわせて、人には個性があり、得意なことと不得意なことは根性論ではどうにもならないことを、明らかな形で実感してもらう。

●「障害の特徴上、できないことがある。でも、任せてみよう。」という路線で選考を行っている企業の成功例を紹介する。

 

また、私の提唱する「できないことがある。でも、任せてみよう」という考え方は、障害者だけでなく、他の社員の働き方にも影響を及ぼし、ひいては社内の労働生産率の向上につながります。

障害を持つ社員の職業適性を踏まえた業務分配ができる会社は、
健常な社員の適性を考えられる会社です。

つまり、人の個性を尊重できる会社です。

そんな会社は、きっと社員全員にとって働きがいのある会社です。

なぜならば、その会社にいる限り、自分の苦手なことばかりじゃなく、得意なことを活かしながら仕事ができるのですから。

 

理想論かもしれないですが、そんな素敵な会社を増やすために、
私ができることを考えている今日のこの頃。